オフパイの話

裏垢を始めて数日が経った。

その日も夜布団に入ってから何件か溜まっているDMに返信をしたりやりとりをしたりしていた。

プロフィールに「関東住み」とざっくり書いていたせいで、フォロワーは都内の人間ばかりになってしまっていた。会えない。

都内まで電車で片道1500円、最寄りの駐車場代も入れて東京遠征に行くだけで軽く4000円が飛ぶ。そんなフォロワーに会うためだけにそんな出費は無理。それにドタキャンとか冷やかしの可能性も充分考えられるからだ。だったら推しのライブがある日の日中の隙間時間にフォロワーに来てもらう形にしようと思ったのだ。そうすれば推しのライブをメインで楽しめるしドタキャンされてもダメージは最小限で済むからだ。

 

私はその夜なんとなく「オフパイしたいな」的なツイートを放流した。本当になんとなくだ。正直いいねが数件着くだけだろうと思ってたら、フォローが飛んできてなんとなくフォローバックしたらすぐに「オフパイのツイート見ました」のDMが届いた。27歳のハーフってプロフに書いてあった。まじか。正気か?

 

以下「Aさん」とする。

その日は「オフパイ気になりますよね」的なやりとりを数回しておやすみをした。

翌日の夜から本格的にやり取りを始めた。まだ私は顔の自撮りを投稿してなかったのに向こうは自撮りを送ってきてくれた。イケメンだ…

不躾だからどこの国のハーフなのかは結局触れなかったが、どことなく雰囲気も背丈も自分が中学の時に好きだった男子に似てて正直めちゃくちゃドキドキした。もちろん面識など無いが。裏活一発目にしてはすごくいい走り出しなのではとおもった。

Aさんとやりとりを始めて、いつ会おうかという話になった。私が次回東京遠征するのは実は1週間後だった。それ以降は来月のクリスマス。だとしたらもう来週しかないということで予定を調整してもらった。正直急過ぎるし早すぎるしで、あんまり良くないだろうなという気はしていたけれど、これを逃すとたぶん自然消滅するだろうなってたぶんお互い思ってただろうから、会うのはその日で決定した。その日から毎晩わけのわからないエロDMをしたり、どんなプレイが好きなのかとか、私からしたら場数がゼロだからなんと返信すべきか困る話も色々されたりして、やっぱり自分の知識と経験の無さは異常なのだと実感した。正直寝る前に布団の中でする猥談、めちゃくちゃ楽しいしドキドキするし、この非日常感がたまらなかった。これは沼るなっていう危機感すら覚えた。

 

当日私は待ち合わせの錦糸町駅前にいた。ライブ遠征で泊まっていたホテルが亀戸にあったからその周辺でということで。あとから知ったのだが、錦糸町ってラブホだらけらしいですね。よく知ってるな都民は…

前日にようやくメイクを頑張って苦労して撮った自撮りをAさんに送り、ドタキャンの気配を感じつつも待ち合わせ場所へと向かった。正直Aさんは仕事で疲れてるからあまり乗り気ではなさそうな感じになっていたが、そんなのは最早予測の範囲内だし、普通にもう来ないだろうなと思いつつ錦糸町をぶらぶらしていた。根っからのゲーマーの自分は錦糸町のパルコの地下にタイステを発見してしまいメンテの行き届いたリズムゲームで無限に時間を潰せることに気付いてしまった。DMも来ないしもうドタキャンでも何でもしていいぞ。ノーダメージだ。

と思ってた矢先に「30分遅れます」とDMが入った。絶対に来ないと思ってたから焦った。自分からオフパイ提案しといて本当に来るとなったら動揺する。本当に来るのかよ…

待ち合わせは12時だったが30分遅れるならあと3クレくらいできるなと思ってたら普通に12時に間に合ったらしく自分は更にビビり散らかした。仕方ないのでもう腹を括って駅前のNEWDAYSの前にいるとDMを送りAさんを待った。本当に来た。

軽く挨拶をして「絶対来ないと思ってました〜笑」とか茶化しながら歩き出した。ホテルをどこにするか決めてなくて急遽その場でホテルの検索を始めて休憩が安そうなところに決定した。ラブホは行ったことはあるが女子会で行っただけで本来の目的で入るのは実は初めてだった。非モテ処女だし当然のことだけど。

ホテルに着くと、かなり年季の入ったレトロな内装で、受付で料金を前払いして後ろにあるパネルで部屋を選ぶといった感じだ。適当に部屋を決めてエレベーターに乗り込んで部屋に向かった。

Aさんには会う前から緊張してびびっていたので部屋に入るとまずなんとなく部屋を歩き回ってしまった。お風呂とかトイレとかを見てると後ろからAさんが「始める?」と声をかけてきた。びびる。

2人でベッドに腰掛けてAさんは胸を触り始める。心の中で(うわ……)とか思いながら頭が真っ白になっていくのがわかった。ワンピースを着て来てしまったから脱ぐことにした。AさんはDMしてた時に私にはパンイチになってほしいとか言ってたからもう脱ぐことにした。